【閉店】八王子大勝軒。最後の一杯に、あえて「味噌」を選んだ理由

食と懐かしさ/ Food & Nostalgia

読了時間:約4分


こんな人に読んでほしい

  • 八王子大勝軒に通ったことがある人
  • 昔から変わらん味に、気づかんうちに救われてきた人
  • 「ちょっと怖いけど、なんか憎めん店主」に心当たりがある人
  • 自分の人生と重なる“行きつけの店”を持っている人

結論

一杯のラーメンは、
ガタがきた僕の心のエンジンに、
ちょうどええ油を差してくれる存在やったんや〜。


八王子大勝軒 ついに閉店(泣)

2025年12月19日。

八王子大勝軒は、23年の歴史に静かに幕を下ろしました。

京王八王子駅から歩いてすぐ。
僕が30代の頃から、「そこにあるのが当たり前」やった店です。

仕事で疲れた日も、
なんとなく気分が沈んだ日も、
あの黄色い看板を見ると
「まあ、とりあえず腹いっぱい食うか」
そう思わせてくれる場所でした。


あえての「期間限定味噌ラーメン」

最後の日、僕が選んだのは
期間限定の味噌ラーメン。

券売機の前で、
指先が一瞬だけ止まりました。

いつもの中華そば。
何十回も食べてきた、あの味。

一瞬だけ、
後ろの若い人に順番を譲って、
少し考えました。

「最後やしな……」

そう思って、
あえて味噌を押しました。

歳を重ねると、
こういう選択に、
ちょっと意味を持たせたくなります。

失敗したくない気持ちと、
それでも一歩踏み出したい気持ち。

この歳になって、
ようやく分かる感覚かもしれません。
わかりませんけどね(笑)。


出てきた一杯は、もう、言葉いらん感じでした。

湯気の向こうに、
23年分の積み重ねが見えるようで。

スープをひと口すすった瞬間、
「あ、これは最後まで飲むやつやな」
自然に、そう思いました。

味噌のコク、ほんのりした甘み。
しっかりしてるのに、しつこくない。
相変わらずの中太麺は、
噛むたびに小麦の味がする。

……正直に言うと、
横の人が食べてた中華そばの匂いを嗅いだとき、
ちょっとだけ心が揺れました(笑)。


……ぷはぁ。
ごちそうさん。

結果、汁まで完飲。

身体のこと考えたら、
たぶん怒られるやつです。
血圧とか、塩分とか、
そのへんはこの日だけ見て見ぬふり。

明日から1週間、
草食動物になって野菜食べます。
……たぶん(笑)。


強面の親父さん

店主の親父さんは、正直、怖かった。

マナー悪い客には容赦なし。
スマホいじりながら食べてる若いのには
「ちゃんと食え」って一喝。

今の時代やったら、
レビューサイトは確実に荒れるタイプやと思います。

あの眼力に睨まれたら、
背筋がピンと伸びて、
抜き打ちテストを受けてる学生みたいな気分になる。

厨房から聞こえる
湯切りの「バシッ!」という音さえ、
なんや叱られてるみたいに聞こえたりして。

……すんません、
お箸、ちゃんときれいに割ります。
心の中で
「僕ちゃいますよ、親父さん」
って言い訳しながら(笑)。

でも、今になって思います。

僕らはきっと、
あの不器用な誠実さに、
ずっと救われてきたんやなぁ、と。


その日の親父さん、
正直、しんどそうでした。

それでも厨房に立って、
一杯一杯、丁寧に作る。

怖いけど、雑やない。不器用やけど、誠実。

「走り切った」
そんな言葉が、自然と浮かびました。


僕の人生と共に歩んだ一杯のラーメン

30歳の頃から通ってきた一杯。

転職したときも、
親を見送ったときも、
子供たちが成人したときも。

楽しいときも、しんどいときも、
あの黄色い看板は、いつもそこにあったんです。

何も言わんと食べて、
「よし、また明日から頑張るか」

そう思わせてくれる場所やったんです。


もう食べられへんのは、
正直、さみしい。

もう、
あのちょっと怖い親父さんにも会えへん。

後継者がいたら……
なんて思う気持ちも、あります。

でも、こればっかりは仕方ないですね。
店にも、人にも、寿命はあります。

「今あるものを大事に」
……なんて格好つけたこと書いてますけど、

ほんまはただ、
もう一回、あの麺をすすりたいだけなんです。

往生際、悪いですね(笑)。


八王子大勝軒。

23年間、本当にお疲れさまでした。
そして、ありがとうございました。

今度どこかで見かけたら、
次は僕のほうから
「ありがとうございました」って
言わせてください。

あなたのラーメンは、

ガタがきた僕の心のエンジンに、
ちょうどええ油を、何度も差してくれました。

これでまた明日から、
なんとか前に進めそうです。

……さあ、
明日は何を食べよかな。

ほな、また。

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